【世界のスピードの中で】
イタリア、ウンブリア州、ピエディルコにて『2019 Memorial Paolo D’Aloja』が開催された。
World Cup第Ⅰ戦を約1ヶ月後に控えた4/12~14。ウンブリア州ののどかな湖に30を越える国のナショナルチームが集った。その中には昨年の世界選手権優勝者や国際大会で活躍する選手も多く見られた。そしてその中に、菅沼奈津美(文2)はいる。
『才能ある若手にこそ、挫折を経験させなければならない。挫折はその選手を成長させる、最大の良薬だからである。(クライフ)』
私はこの台詞の持つ妙な説得力に屈しているし、語弊を恐れずに言えばその「最大の良薬」を求めてイタリアまで菅沼を連れてきている。
決勝レースを終えた。菅沼は世界のトップから大きく離されてゴール。
しかし菅沼には悲壮感も絶望感もなく、ただ一言「世界は凄い」。
そして「彼らの凄さは生まれ持った身体的素質だけでなく、それをフルに活用するための技術力にある。それを直に見て肌で感じられたことは、私のこれからに繋がる経験になった。」とつづけた。
才能ある若手は、挫折や絶望すらも糧にして次へ進んでいく。それとも挫折や絶望に出会いながら、それでも前進できる能力のことを、才能と呼ぶのだろうか。
そんなことを考えながら、ふと思い出したことがある。そういえば大西花歩も大学2年生の年にイタリアでレースをして、世界から大きく離されてゴールしたな…と。そしてその夏、インカレで表彰台に上ったな…と。
2019シーズンは始まったばかりである。イタリア産良薬の効き目を、ゆるりと待ちたい。
(記事:井手雅敏)